VOL.7 愛南のクエ漁師を訪ねて 愛南町敦盛地区漁港

クエ漁師がいるという愛南町敦盛という集落に向かった。

漁師の名は井田幸雄さん。

湾に浮かぶ自慢の船は、「幸漁丸」と名付けられている。

すぐそばの小屋にクエ漁の道具や縄があった。

ここでは、延縄漁という方法で、クエを獲る。

餌をビニール糸の先につけ、縄でつなぐ。

そのしかけが海底に転がっている状態で、クエが餌にかかるのを待ち、引き上げる。

「今までは42㎏が最高やね。

太ったクエはもっと重くなるけど、

この道具ではそれが限界やね。」

何が釣れたかは、縄をあげている最中に感覚で分かるそうだ。

「クエの場合、腹の空気が水圧で小さくなっとるけど、

急に上げたらおなかが膨らんで浮き輪代わりになって、

ひっくり返るんよ。それで手応えがなくなるんよ。」

クエ漁の秘訣を聞いてみると、意外な答えが来た。

「秘訣はとくにないね。クエ漁は博打やから。まさに、幻の魚。

こっちの思い通りには進まないし、潮次第。タイミングが重要。」

井田さんは堂々と語り、

その姿はこの地域唯一のクエ漁師の誇りを思わせた。

最後に、クエ料理のおすすめを聞くと、井田さんは鍋が好きらしい。

鍋にしたら出汁が出て、野菜が美味くなる。

「クエは皮も内臓も食べられるし、とくに『ぷくっ』としたくちびるやほっぺたがうまいんよ」と、笑顔で語ってくれた。