爽やかな風が吹く五月、瀬戸内海の小さな離島を訪ねた。
「まず、出荷の様子を見ていってください」
そう語り出したのは、上島町魚島村漁協、村上専務理事。
国内外に店舗を持つ「くら寿司」さんが魚島の魚を直接購入し、
大阪にある直営の魚屋で販売を行っているらしい。
「定置網にかかった魚をキロ単価で買ってくれるから
エイとか売り物にならなかった魚もお金になるんよ」
なるほど、だから魚種ごとに
水揚げした魚の重さを測っているのか。
その日の売上げも自分でわかるから、やり甲斐もあるし、
天然魚を安定して出荷できる魚島という
愛媛屈指の漁場だからこそ可能な仕組みでもあるな…。
産地と消費地をつなぐ、新しい流通の試みというわけか。
見事な手さばきで、出荷する様々な魚の血抜きをする漁師たち。
「漁師自らが絞めた美味しい魚を出荷する付加価値の高い漁業!」
撮影しながら、そんな言葉が浮かんだ。
そんな事を考えながら取材を続けていると
幻の高級魚マナガツオの姿が…。
「せっかくやから、獲れたてをご馳走しますよ!」
村上さんが、神経抜きで絞めたマナガツオを
三上組合長のご自宅で刺身にしてくださった。
とろけるような極上の刺身は、忘れられない味になった。