2月のある日、しまなみ海道ちかくの漁港を訪ねた。
「鯛の一本釣りをするのはここの特徴なんよ!」
そう笑って語りだしたのは、檜垣監事。
一本釣り漁とは一本の釣り糸に針をつける手釣の漁法だ。
手に持った一本の釣糸で、枝針5本を巧みにあやつる。
竿を使わないのは、海流が早く、潮の満ち引きが大きいためで、
来島海峡では代表的な漁法だ。
大浜漁協ナンバー1の職人である檜垣さんは、
1㎏を超える鯛を生け簀から取り出して言った。
「やっぱり網で捕ったのとの差は一目瞭然じゃろ!!」
目の前で、大きな美しい鯛が手網におどる。
この時期にこのサイズは珍しいそうだ。
その秘訣を訪ねてみると
檜垣さんは、小さな生物を生け簀の砂の中から取りだした。
「こんな餌は見たことないやろ?」
これはミミイカと呼ばれ、来島海峡の鯛の大好物らしい。
勿論、大漁の秘密はこの生き餌だけでないのだろうが…。
こうして、晴天のしまなみ海道が見える港で時は流れ…
別れ際、檜垣さんは片手をあげ、船に乗り颯爽と去って行った